《MUMEI》

「羽山…?」



声がした方を向く。


そこには
さっきまで私が見ていた


彼がいた。




「あれっっ、違った?」

ぼーっと彼を
見つめていた私に
彼が焦ったように言う

「え…何が?」

「いや、名前間違ったかと思って」

あー…
私が反応しなかったからか。


「…あってるよ。」

そう言うと緊張がほぐれたように
ふわっと笑う彼。


そんな不意打ちに
ドキドキする私。


「俺、片岡晴輝って言います」

「え…」

いきなり自己紹介するからびっくりして

「…そう。」

素っ気ない態度をとってしまった


感じ悪い奴って思われたかも。


「羽山はさ、いつもみんなの嫌がる仕事してて、偉いよな」


そんなの断るのの方が
めんどくさいからだよ。


えっ


いつも…?


「私の事…」


「ん?…なに??」


「見てたの…?」


そう言うと目の前の彼は
びっくりしたような顔をして
それと同時に、耳まで真っ赤になって


「いやっ…いつもってゆーかっっ…」


そんな彼がかわいい
と思った

いいなって思った。



「俺っ…もう行かなきゃ!!じゃーな。」


そう言って彼は
慌ただしく教室から
飛び出して行った。



日誌はもう
書き終えたのに
しばらく教室から出ることが出来なかった


彼とはじめて話をした
この教室から
離れたくなかった。

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