《MUMEI》 2件目私は今、ストーカー被害にあっている。 いつもいつも、いつもいつもいつもいつもいつもいつも、「彼」から視線を感じるのだ。 彼の名前は山本勇治、平成元年8月16日生まれ、4月の健康診断の結果によれば身長172cm体重65kg。 視力は両目とも0.6で授業のときだけ近視用のメガネをかけている。 髪は綺麗に短く整えていて、最近茶髪だった髪色を黒に戻した。就活を視野に入れたからかもしれない。 私と同じ大学同じ学部同じ学科、ゼミだけが別でいつも2つ隣のゼミ室へ消えていく。 今日も彼から視線を感じて、私は教室の入り口に視線を移して無視をした。 水曜日の2限、サブカルチャーに関しての話題も含む全体公開のこの授業はうちの学部の生徒からも勿論人気があって、案の定私も彼も選択をしている。 はぁ、と小さくため息をつくと、隣に座っていた女の子が怪訝な顔をした。 なんだか私が悪いみたい……。 憂鬱な気持ちになって大好きな授業なのに心の中で「早く終われ!」と唱えてみた。 2限が終わると昼休みになる。終業を告げるチャイムが鳴ると皆教室から出ていった。 うちの学生のほとんどは学食か近場のカフェ、ファーストフード店などで昼食をとる。 彼は大体友達と連れだって学食へ行く。私と同じ。 私はパスタを、彼は定食をよく頼む。並ぶときは大抵私の前に彼が現れる。そう、いつもいつも、彼は私の前に現れるのだ。 「いい加減にしてッ!」 私は叫ぶ。 彼をはじめ、学食に来ていた人達が私を見た。 「なんで? なんでなの?! なんでいつも私の前にいるの?! いつもいつも、いつもいつもいつもいつもいつもいつも!!!」 「え……?!」 「本当にもういい加減にしてよ! この……ッ!!!」 彼は困惑したように私を見ます。 けれど私は気にしません。だって、私は…… 「この、ストーカー!!!」 被害者なのだもの。 「って、アンタ誰だよ?!」 前へ |次へ |
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