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《MUMEI》 そんな言葉の積み重なりが感じていたぎこちなさを溶かしていく。 あの頃の感覚が少しずつ取り戻されてく 真夏日の真っ昼間 グランドで硬球を追い掛けていた 何も考えず自分のやりたいコトにただ夢中になっていたあの頃の感覚 幼かった 何も怖いモノが無かった頃の感覚 「お互い、ちょっと大人になっちゃったのかな? 少し寂しいね。」 ヤスコが少し目を伏せた ケンイチはハッとした さっきまで自分は目を合わせられず横を向いていたはずなのに いつの間にかヤスコの顔を見詰めていた あの頃のままの 長いまつ毛が伏せられた表情 二人の終わりを告げた時の表情に少し似ているのに気がついたから ゴクリと唾を飲み込んでやっと次の言葉を繰り出した 「寂しいってなんだよ?」 「ん?なんかね、ケンイチの言葉で思ったの、お支払いの時だけいればいいって なんか寂しいなって 私も同じだなぁって」 「もう、お互い別々の人がいて、別々の生活があるって解ってるよ。でもね、私は違うって思ったの、私だったらいつもケンイチにそばにいて欲しいって 買い物に付き合わされて 機嫌が悪いケンイチで も やっぱり一緒にいて欲しいって思うんだろうな って」 ヤスコの声が少し震えていた 俺を見る瞳がゆらゆら涙で揺れていた 「ごめん。なんだか少しヘンだね。感情的になっちゃった」 ヤスコが無理に笑顔を作ったのが解る 二人の終わりの頃のよく見せてた笑顔だった 「なぁ あの頃と比べると、俺は少し大人になったと思うよ」 「うん、私も ほんのちょっとね、自分のコトだけ考えなくなった。」 「なぁ 今度、二人で会ってみない?」 「週末はダメだよ。旦那も休みだし子供もね・・・」 「わかった。年が明けたら仕事一日休むよ。丁度一息つきたかったんだ、ちょっと時間をくれないか?」 テーブルの上で 二人の手のひらが少しだけ重なっていた 前へ |
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