《MUMEI》
無言の心配
朝独特の音が外から漏れてくる。

「ん・・・・・・」

今宵は目を覚ますとムクリと起き上がった。

目が重い。

そのまま目線を掛け時計にやると、9時半を指している。

「そっか。昨日そのまま寝ちゃったんだ」

今宵はシワシワになっている服を脱ぎ、部屋着に着替えた。

昨日はお母さんになんも言わないで上に上がってきちゃったからな・・・・・・。

心配してるよね。

「顔見せてこよう」

今宵が階段を下り、リビングに行くと加奈子が駆け寄ってきた。

「今宵」

「おはよう。お母さん」

「おはよう。とりあえず座ってなさい。冷やした方がいいわ、その目」

加奈子は心配そうに顔をしかめ、台所へ向かった。

今宵が椅子に腰掛けると、加奈子は持ってきた濡れタオルを渡す。

「ありがと」

今宵はタオルで目を覆うと、後ろに首を反らした。

「今日はそうしてなさい。今からお母さん出かけてくるけど、大丈夫?」

「大丈夫だよ。行って来て」

「そう。じゃあそれ当ててるのよ」

加奈子はかけていたエプロンをはずし、畳んでソファに置いた。

「お母さん!!」

「どうしたの?」

「・・・・・・心配かけてごめんね?」

今宵の言葉に加奈子は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに口元を緩めた。

「何言ってんのよ!!いつものことでしょ。・・・・・・お母さん、理由は聞かないけど、話したくなったら話して?いつまでも1人で溜め込んでちゃ駄目よ」

これ、昨日琴吹くんにも言われたんだっけ。

今宵は重たい目尻を下げて笑った。

「ありがと。お母さん」

「じゃあ行って来るわね」

加奈子は微笑むと玄関へ向かった。

何も聞かないでくれるんだね。

昨日は一晩中心配かけたのに・・・・・。

「ありがと」

今宵はもう一度小さく呟いた。

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