《MUMEI》

「先行くぞ!」
ユウゴは怒鳴るとステージへ走った。
すぐ真横を銃弾が飛び、反射的に姿勢を低くする。
その時、背後から爆発音が響いた。
花火が爆発でもしたかのような連続した爆発音にユウゴは何が起こったのかと振り返る。
するとケンイチが楽しそうに笑いながら走ってきた。
「なにやってんだよ、さっさと逃げるんだろ。置いてくぞ」
彼はユウゴにそう言うと、裏口へと走って行ってしまった。
まだ音が鳴り続けている会場を見回すが、一般人がパニックになって警護の邪魔をしているだけで、何かが壊れる様子はない。
ただ火薬の臭いが鼻についた。
「また爆竹かよ。どれだけ持ってんだ」
ユウゴは軽く舌打ちをして彼の後を追った。
「こっちだ」
ステージの横に入ると織田がドアを開けて待っていた。
「外の様子は?」
「まだ大丈夫だ。奴らの仲間は来ていない」
ユウゴは頷くと、外に走り出た。
急いでここから離れなくてならない。
「走るぞ」
先に外に出ていたケンイチにそう声をかけると、ユウゴは織田に顔を向けた。
織田は小さく頷くと「こっちだ」と走り出した。
織田の先導に従って三人は走る。
パトカーや救急車のサイレンが近づいてくるのがわかる。
もう奴らの仲間も来ているだろうか。
ユウゴが考えているうちに三人は住宅街に入り込んでいた。
細い道が迷路のように張り巡らされているようで一度はぐれると合流するのが難しそうだ。
「ちょっと、休もうぜ」
ケンイチが息を切らせながら言うと走る足を止めた。
「止まるな。歩きながら息を整えろよ。家から誰か見てるかもしれない」
ユウゴの言葉にケンイチは小さく頷き、歩きはじめた。

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