《MUMEI》 ……………………………… 屋上。 ……………………………… 「…なんで付いてくんだよ?」 そこには翔太と椎名の姿があった。 「いや…ただ…何となく…」 パンを食べる翔太の横で、 小さくなりながらコーヒー牛乳を飲む椎名。 「それくれ。」 「え?」 「飲み物買うの忘れた。」 「あ…うっす…」 (パンも『買って』はいないと思うけど…) 「あの…」 「何?」 コーヒー牛乳を飲みながら翔太が答える。 「部活のことなんすけど…」 「あぁ、聞いた。」 「え?」 「学校中の噂になってんぞ。」 「…ですよね。」 落ち込む椎名。 できることなら、 知られたくなかった相手だった。 「…言っとくけど助けね〜ぞ。」 「え…?」 「確かに、 くだらね〜ことした猪狩はムカつく。 けどそれで諦めたお前らもお前らでムカつく。 1番ムカつくのは顧問の癖に何も知らね〜で後から気付いた西野。」 (それは単に翔太さんが先生のこと嫌いだからじゃ…) 「めんどくせぇから説明したくねぇけど、 とにかく助ける気はね〜ぞ。 今は特にそんな気分にはなれね〜。」 「…それでも」 「?」 「それでも別にいいです…」 「あ?」 「ただ…」 「…」 「翔太さんが自分のこと嫌ってても… 自分にとって翔太さんは目標なんで… それは変わらないんで…」 「…ふっ。」 少しだが、 翔太は笑った。 それは口元が緩む程度の、 ホントに小さな笑みだった。 ボソッ… 「…ありがとな。」 人には聞こえないような小さな声で、 翔太はそう言った。 屋上を去る翔太。 椎名には、 その言葉がきちんと聞こえていた。 (翔太さん…) 前へ |次へ |
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