《MUMEI》 ライオン乱入!「モデルさえ決まれば、外見の描写はあっという間だ。モデルをそのままスライドすればいい」 「スライド?」 「例えば里江なら、髪は短め。やや茶髪。このように顔、身長、体重、口癖、喋り方、ものの考え方、性格、ファッションと外見内面が簡単に描写できる」 「なるほりろ」仲田は感心した。 「想像力さえあれば、コンビニの店員やウエートレスでもキャラにできる」 「外見はわかるけど性格がわかりません」 「主人公ではなく、小説の中のウエートレスの役に、実際のウエートレスを使えばリアリティーが増す」 「そうか!」仲田は手を叩く思いで目を見開いた。 「たったワンシーンでアカデミー賞の助演女優賞を取る女優もいる。チョイ役に大女優が特別出演するのも遊び心だ」 仲田はますます創作意欲が湧いてきた。 「それいいですねえ。映画でウエートレスに宮崎あおいが出てきたら焦りますよ」 会話は弾む。 「もっと想像力があれば動物をモデルにすることもできる」 「動物?」 「火剣なんかどう見てもモデルはライオンだろう」 「ハハハハハ! ライオン! ハハハハハ!」 「GAHAHAHAHAHAHA!」 「え?」 仲田の隣に火剣がすわっている。 「わあああああ!」 身長195センチ、体重135キロ。激村とほぼ変わらない巨漢の火剣獣三郎が乱入。 「仲田、テメー、何嘲笑してんだ?」 「嘲笑なんかしてませんよう」仲田は蒼白だ。 「激村、テメー、だれがライオンだって?」 「ライオンは誉め言葉だろう」切り返した。 火剣は髪がボサボサで盛り上がっている。髪というよりライオンのたてがみと表現したほうが早い。 迷彩服上下に黒い皮ジャン。筋骨逞しくプロレスラーのような、見事にビルドアップされた肉体を誇っている。 なぜか山靴。特注だ。ヒゲも猛々しい。 「火剣。何しに来た?」 「バッファロー、じゃなかったバーロー! テメーがデタラメを教えないように監視に来たんだ」 「授業の邪魔をするなら帰れ」 「そういう冷たいこと言うと、ゲゲゲの鬼太郎の主題歌をフルコーラス歌うぞ」 「やめろ」 「あれはーだれだ、だれだ、だれだ…」 「歌が違ってますよ」仲田が呆れ顔で言った。 これでは授業にならない。激村は焦っていた。 「火剣。仲田君は真剣なんだ」 「バッファロー! 俺様だって真剣だぞ。俺ほど真剣な人間がこの日本に何人いると思う?」 「1億人くらいじゃないか」 「おおお〜白鳥の湖」 「……」 前へ |次へ |
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