《MUMEI》
三人の男
「いやだ。逃げなきゃ……逃げなきゃ」
男の声がすぐ近くに聞こえる。
同時に足音も近くなってきた。
おそらく、地下鉄のトンネルを来ているのだろう。

一体、何者だろう。

「おい、いたぞ」
「やりぃ。俺の獲物!」
「バーカ。俺達のだろ」
ギャハハハと下品に笑う男たちの声がホームに響き渡る。
声は三人。
いずれもまだ若い。

「い、嫌だ!来るな!」
ほとんど悲鳴に近い声で男は叫んだ。
「来るなって言われてもな」
「俺たちだって、ノルマこなさなきゃいけないんだよ」
「そうそう。だから、おまえ逃げんな」
「う、うるさい。来るんじゃねえ」
男が尻餅でもついたのか、ドサっと音がした。

「悪いな。俺たちも命がかかってるんでね」
冷静な声の直後、ゴーという凄まじい音と悲鳴が響いた。
ボゥっとホームが明るくなる。

間もなく悲鳴が止むと、音も消えて辺りは再び暗闇に戻った。

「これで、十人?」
「……ああ」
「よっしゃ。これで、俺たちは保護してもらえるってわけだ」
「そうだな。俺に感謝しろよ」
「わかってる。おまえの親父が実行委員でよかったよ。発信機ついた奴追っかけて、殺るだけでいいなんてさ」
「しかも三人でたったの十人。かるいよな。こんなすげえ武器くれるしよ」
「お礼に今度、なんかおごれよ。そんじゃ、戻るか。セーフハウスへ」
「ああ」
三人の声はだんだんと遠ざかり、やがて消えていった。

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