《MUMEI》

今日はバレンタイン
デー。チョコと一緒
に大切な人に自分の
想いを伝える事の出
来る特別な日。


本当は、僕も手作り
チョコを、大好きな
人に渡したい。だけ
ど、僕には渡せない
。だって僕は、偽り
だから…。


東雲先輩は、凄く格
好良くて、クールで
一見近寄り難く思え
るけど、実は、優し
くて思いやり溢れる



菫(スミレ)と言う
名前と女の子みたい
な容姿で、イジメに
あっていた僕を、東
雲先輩は、全校生徒
の前で、彼氏の振り
をして助けてくれた


それ以来、僕へのイ
ジメはピタリと止ん
だ。


ずっと前から東雲先
輩に憧れていて、好
きだった僕は、本当
の彼氏じゃなくて、
振りだったけど…チ
クリと胸が痛んだん
だけど…それでも嬉
しかったんだ。


イジメが止んだ後も
心配だからって、彼
氏の振りを続けてく
れて…。


僕は、そんな東雲先
輩の優しさに付け込
んで、甘えて…。


ごめんね、東雲先輩
でも僕は決めてるん
だ。東雲先輩に本命
が出来たら、僕は潔
く消えようって…。


だから…もうちょっ
とだけ、偽りの彼氏
でいてね、東雲先輩


+++++++++


放課後、東雲先輩と
待ち合わせて一緒に
帰ろうとしたら、先
輩が先生に呼ばれた


『あ〜悪い、カバン
持ってて、すぐ戻る
から』


『はい』


優しい笑顔を残し走
り去る先輩を見送り
カバンを抱え直す。


バサバサッーー。
あ、やっちゃった!
先輩のカバンの中身
をぶちまけてしまっ
た。慌てて中身を拾
う、その手が止まっ
た。


『…嘘、コレって』

それは、〇ディバの
包装紙に包まれて金
色のリボンが掛けら
れた四角い箱。


…なんで?

だって、先輩は、今
まで誰からのチョコ
も受け取らなくて…
全部、丁寧に断って
いたよね?


…あぁ、もしかして
本当の人が出来た?


…あぁ、そっかぁ。
ついに…きたんだね
この日が。


…もう、先輩ったら
言ってくれたら良か
ったのに、優しいん
だから…。


ーーッタ〜〜ンンン。
僕の目から落ちた涙
が床に滲む。
僕はチョコの箱を握
り締めてヘタリと床
に座り込んでいた。

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