《MUMEI》

.

『お待たせーー』

先輩の声がした後、
僕とチョコの箱を見
て、先輩が凄く焦っ
ている。


『あ、ソレは…見た
のか?』


『はい、ごめんなさ
い、カバン落として
しまって…中身ぶち
まけちゃって…それ
で…』


もう何も言えなくて
俯く僕の傍にそっと
しゃがんだ先輩が優
しく聞いてくる。


『…で、お前は何で
泣いてるんだ?また
誰かにイジメられた
のか?』


『…違い、ます。た
だ、このチョコが…
いえ、すみません』

慌てて、首を振って
否定すれば、少し困
った顔をした先輩と
目が合った。


先輩がガシガシと頭
を掻いて、フーと息
を吐き、ボソリと言
った。


『お前んだよ、それ



『……え?今、なん
て?』


『だ・か・ら〜、そ
のチョコは、俺がお
前に買った、バレン
タインのチョコなの
!』


『………ええっ?』


びっくりして東雲先
輩の顔を見れば、茹
蛸みたいに真っ赤な
顔をしている。


『………嘘っ』


『…バカ、本当だ。
すっげえ、恥ずかし
かったんだぞ。それ
買うの。』


『……何で?』


『お前、ずっと変な
誤解してたから。』


『誤解?』


『そう、俺が、彼氏
の振りしてるって。
あのな、俺はお前が
好きだったの。だか
らあの時、本気でお
前の彼氏になったつ
もりだった。だけど
お前は、何時までも
振りだと思い込んで
て。』


だから、このチョコ
を僕に渡して、ちゃ
んと自分の想いを伝
えようとしたんだ。
と、東雲先輩は言っ
た。


大泣きしながらチョ
コの箱を握り締める
僕を、優しく抱きし
めて先輩が囁く。


『もう泣くな、心配
しなくても俺はお前
が思ってるよりも、
お前の事が好きで大
切に想っているよ』


『…っくっ…し、の
のめ、せんぱ〜い』


益々、涙が止まらな
くなり、涙と鼻水で
ぐちゃぐちゃな僕の
顔を見ながら、困っ
たように笑う東雲先
輩に、明日、僕から
もチョコを渡そうと
思った。


…ずっと伝えたくて
伝えられなかった…


大切な一言と一緒に


『先輩、大好き』




…おしまい…

2011.2.14

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