《MUMEI》
キャラの独り歩き現象
火剣がまくる。
「矢吹丈VS力石徹のシングルマッチに行き着くまでのドラマが重要なんだ」
「ボクシングにタッグマッチなんかないです」
「揚げ足を取ったら延髄斬りだぞ」凶器の山靴を上げる火剣。
「やめてください」
激村は強引に話を戻した。
「創作というのはピコピコと友達にメールを打つように書けるものではない。全生命を懸けて取り組むものだと思っている」
「はい!」
「固い」
火剣の返事に激村が睨む。
「固い?」
「Bブラジルの頭より固いな。リラックスして楽しみながら書くことも大事だぞ」
「確かに火剣の言う通り、人間が一番力を発揮できるのは、リラックスしているときだ」
「みろ」
「そうなんですか?」仲田が納得行かない表情で聞く。
「緊張しているときよりもリラックスした状態のほうが集中力も高まっている」
「だから俺様はいつもリラックスしている」
「リラックスとふざけは違うぞ」
「だれがゴリラーマンや?」
「言ってない」
「失礼やないか」
「どっちに?」
一進一退の攻防は続く。
「キャラの独り歩き現象についてもう少し詳しく語ろう。何も巨匠だけが体験する現象ではない」
「そうなんですか?」仲田が身を乗り出した。
「小説を書いているときに、キャラが勝手にアドリブを言い始めてこそ傑作を書ける予感がする」
「アドリブ?」
「アドリブも知らないのか仲田は。キャラが紙面から飛び出してバスケを始めるんだ」
「無理があるぞ火剣」
「うるせえ。なぜそれはドリブルだとフォローしない」
「そんなレベルの低い駄洒落には付き合えない」
「フォー!」
「うるさい」
試合が荒れてきた。乱ペースに巻き込まれてはいけない。
「仲田君」
「はい」
「作品を創作していれば、キャラの独り歩き現象を体感できるようになる」
「なりますかねえ」仲田は心配顔だ。
「キャラはキャスト。キャストだから生きている俳優と思って、監督である仲田君はキャストと相談しながらストーリーを創り上げていくんだ」
激村は熱く語った。
「紙にペンで書いているという感じではなく、もっと立体的なものなんだ」
「はあ…」
「この芸術的感覚は仲田にはわかるまい」
「火剣さんにはわかるんですか?」
「バッファロー! 俺様の天才ぶりがじきに明かされるぜい」

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