《MUMEI》
ひとりもの
「じゃあ、その友達の恋人が浮気したのを言い出せない訳だ。」
「そうなんです」
七生と同じアパートなのに……。国雄さんの部屋、すっげえ綺麗に整頓されている。
壁に穴は空いてないし。おまけに料理も美味い。ただ一つ欠点を述べるなら馬鹿がつくほどの犬好き。
「二郎君はその娘が好きなの?」
ブッ!
吹いてしまう。
「何でですか!俺彼女いますもん!友達の彼女って言っとるじゃないですか!」
勢い任せに喋って実名出すと面倒だから否定は控えよう。
「違うの?その友達の事、凄く大切にしてるみたいだし。
それに、彼女は理由にならない。」
「それって、不純じゃないですか。……浮気!」
それ以前の気もするが。
「基準がないよ。本気を出せば浮気とは言えないじゃない。」
「うわっ、わ、国雄さんて、うわー!」
これが夜の帝王の恋愛観なのか。
「二郎くんは今恋してるんだね。彼女は幸せだな、恋はしようとして出来るもんじゃないもの。
でも何処にでも落ちている。ある条件が揃った瞬間に恋を見つけることが出来るんだ。それが交際している相手とは限らないんだよ」
国雄さんは珈琲を掻き混ぜながら音も無く笑う。意味深だな。
「国雄さんは子供の言うことだし説得力無いかもしれないですけど、彼女のことは本気ですよ。友達のことも本気で悩んでいるんです。」
「そうだね。目で分かる。
友達に何となく忠告してあげたら?」
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