《MUMEI》
タイトルを考える
激村が熱く語る。
「これからはさらに具体的に解説していきたい」
「具体的は大事だ」火剣が言った。「誹謗中傷は良くねえ」
「抽象的です」仲田が漢字をノートに書いた。
「仲田はじゃあ、小説の中で誹謗中傷をやるのか?」
「違いますよう!」
「火剣」激村が口を挟んだ。「テーマがあちこち飛ぶとわかりにくくなる。一つ一つ行こう」
「ほう…れんそう」
激村は火剣を無視して先へ進んだ。
「わかりやすく順番に行こう。まずはインパクトのあるタイトルを考える」
「タイトルは大事ですね」
「タイトルは公開直前まで吟味する。タイトルは最重要だからだ。下書きの段階では仮題でもいい」
「仮題?」仲田が聞いた。
「映画『プロジェクトA』も「A計画」という仮題で撮影していた」
火剣が意見を述べる。
「でもよォ、タイトルに思い入れがある場合は別だ」
「思い入れ?」
「例えば『あずみ』とかヒロインの名前がタイトルの場合、ヒロインへの強い思い入れを感じる」
「火剣。年に1回くらいはいいこと言うな」
「何だと。そういうこと言うと東京23区を全部言うぞ」
「やめろ」
「亀戸、錦糸町、両国…」
「あと、ヒロインの名前ではないが『もののけ姫』もインパクトのあるタイトルだ」
「いいですね『もののけ姫』」仲田が笑顔で語る。
火剣は真顔。
「シカトか? そういう攻撃すると虫虫大行進を熱唱するぞ。知らないか」
激村は授業を続けた。
「まず創作ノートに思い浮かぶタイトルを片っ端から書き出す」
「はい」
「出尽くしたところで、それぞれを見比べながら考えていく」
火剣も加わった。
「俺様はタイトルの左側に印をつけるぜ」
「印?」
「◎〇▲△…」
「競馬じゃないんですから」
「うるせえ。タヤスツヨシばりのショルダータックルを食らいたいか? 知らないか」
「数字の123でもABCでもいいな」激村が言った。
「印より数字のほうがいいですね」
「泣かすぞ仲田」
乱ペース。
「そして、ベスト1のタイトルを検索する」
「検索?」仲田が聞く。
「全く同じタイトルが検索の1ページ目になければOKにする」
「あったらどうすんだ?」
「考える。自分が知らないだけで、大ヒットした作品のタイトルだと、真似だと思われるからな」
「マネー!」
「そういう場合はベスト2を検索するんですか?」
「姑息なやり方だ」
「何か言ったか火剣」
「ラリホーラリホーマミムメモ」

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