《MUMEI》
9分13秒
………………………………



速さを求めた関谷。


しかし、


当時ハンド部の練習は緩く、


失った体力を戻す程度の結果しか生み出すことはできなかった。


いつしかそんな環境に慣れてしまった関谷は、


思い描いた理想を再び忘れかけてしまう。


その間にも理想を失わなかった椎名との間に、


少しずつ差が出ていたことにも気付かずに。


そんな関谷に本当の転機が訪れたのは、


クロがコーチを引き受けたその瞬間からであった。


練習メニューは一変。


クロの好みもあり、


スピードを重視した練習内容になり、


関谷は著しい成長を見せる。


ようやく見えた理想の背中。


そんな関谷に今、


サイドとしての力量を試される最大の試練が訪れていた。



………………………………














………………………………



現在。県営武道館。



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キュッ…!!



(ちっ…)



要の足が止まる。


速攻は出ない。



(…へぇ。)



ヒュッ…



ボールはセンターから右45へ。


秀皇はゆっくりとコートを進む。


その間に赤高はディフェンスに戻る。



「…やるじゃん。」



「は?」



要が呟いた言葉は、
明らかに関谷に向けられた物であった。

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