《MUMEI》 引力のあるタイトル「21世紀はディープインパクトの時代だ」 「火剣さん、競馬の話はいいですよう」 「バカだな仲田。これは比喩だ」火剣が力説する。「これからはディープなインパクトがないと埋もれる厳しい時代だぜ」 「火剣。ようやく授業に参加する気になったか?」 「あたぼーよ。俺様は昔から歩くクリエーターと呼ばれている」 「初耳ですね」 「そういうこと言うと星一徹バックドロップを食らわすぞ」 「何ですか星一徹バックドロップって?」 「知らないのか仲田。じゃあ、そこの机にすわってみろ」 仲田は机を見た。 「いいですよ。だいたいわかりましたから」 「火剣。無意味な会話でページ数を無駄に使うのも、小説ではあまりやらないほうがいいな」 「何だと?」火剣が睨む。「そういうこと言うと巨人の星の主題歌を熱唱するぞ」 「やめろ」 「王者の星がー、おーれーをーよーぶー!」 「それはバンババンです」仲田が呆れ顔で言う。 「ばーんばばーん! ばーんばばーん…」 「火剣。その窓に頭から突っ込みたいか?」 激村が睨んだが火剣は黙らない。 「聞いたか仲田。常日頃非暴力を掲げている激村が、人の頭を窓ガラスに叩きつけると、暴力をほのめかして脅しをかけるとはな」 「いいですよ、そんな話」仲田は泣き顔だ。 「激村のニックネームは矛盾帝王と言うんだ」 激村は仲田を見た。 「仲田君。火剣を無視して授業を進めよう」 「はい」 「はいだと。灰とダイヤモンドを歌うぞ……生まれてないか」 「やはり小説のタイトルは引力が大事だ」 「引力?」 「タイトルで引き込む。読みたいと思わせる」 「はい」 「灰」 「…世の中には星の数ほどのタイトルが溢れている」 「星君!」 「小説だけでなく映画、ドラマ、マンガ、さらに曲名も入れたら大変な数だ」 「そうですね」仲田は不安な顔をした。 「ありきたりなタイトルなんか、全く目立たない」激村が乗ってきた。「人はまずタイトルを見る。引力のあるタイトルなら目が止まる。まさにオリジナリティーの勝負だ」 「オリジナリティー…」 「オリエンタルラジオ」 「長いアルファベットで読めないタイトルも素通りされるな」 「素通りはきついな」火剣がまた口を挟む。「よォって上げた手の行き場に困るぜ」 「火剣」 「何だ矛盾帝王」 「窓からダイブしたいか?」 「聞いたか仲田」火剣は笑顔で語る。「ここは3階だぞ。非暴力主義者が殺すと脅迫するとはな」 「横道にそれ過ぎですよう」仲田が本気で怒る。 「もこみち?」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |