《MUMEI》 ギリギリアウト!「小説を創作するとき、検索はよく使うな」激村が言った。「キャラの名前もそう。有名人と同姓同名というのはあまりよくない」 「厳しいですねえ」仲田が不安顔で言った。「知らない場合もダメなんですか?」 「有名の度合いにもよるな」 激村が言いかけたが、そのセリフを遮るように火剣が意見を述べる。 「仲田。あきらとかヒロミとか、そういうありふれた名前なら問題ねえよ。彩なんか一杯いるだろ?」 「はい」 「でも上戸彩、高島彩と来て知りませんでしたは通用しない」 「なるほど」 「流行を追う必要はねえが、あまりにも知らな過ぎるのも作家としてはマイナスだと思うぜ」 「火剣」激村が明るい笑顔で語る。「まともな話もできるじゃないか」 「バッファロー! 俺様はいつでもまともだ。テメーみたいな嘘つきとは違う」 「だれが嘘つきだ?」激村から笑顔が消えた。 「黙れ矛盾帝王」 「貴様こそ黙れ野蛮人のなれの果てが」 「野蛮レベルなら激村には勝てねえ」 「一度入院しないとわからないタイプか?」 「まあまあ」仲田が止めた。 場外乱闘の末ノーコンテストで授業中止という結末だけは避けたい。 それは仲田だけでなく激村も同じだった。反則攻撃を受けても冷静に試合を成立させなければならない。 「話を戻そう。キャラの名前が決まったら検索。タイトルが決まったら検索。超有名なら検索の1ページ目に出てくる。なければとりあえずOKにする」 「もののけ王女とか魔女の宅配便とかもダメか?」 「ギリギリアウトだ」 「じゃあ、デスノートパソコンは?」 「ギリギリアウトだろう?」 「難しいですね」 「簡単だ」 「タイトルは難しい。すでに無数のタイトルが溢れている」激村が語る。「その中でインパクトがあり、引力のあるタイトルを考えなければ素通りされる」 「よォ!」火剣が突然笑顔で手を上げた。「兄ちゃん、コンサート来たの? で、券あんの?」 「ダフ屋かっ!」激村が睨む。 「ダフ屋を交わすには素通りしかねえぜ」 「そんな話は今してません」仲田が顔をしかめる。 「浅草とかウインズがあるところも危ねえぜ」 「固有名詞を出すのはやめましょうよ」 「うるせえ」火剣はまた笑顔で手を上げる。「よォ、なべちゃんとこの息子さん?」 「なべちゃん?」 「そうか、競馬やる年んなったかあ。で、きょうのメインレース何買うんだい?」 「火剣」 「何だ激村?」 「コーチ屋、やってんだろ?」 「やってない、やってない」火剣が小声で答えながら首を左右に振る。 「授業になりませんね」 「よし、次はストーリーについて語り合おう」火剣一人だけが張り切る。 「まだだ」 「テメーの授業はまどろっこしいんだ」 「貴様がいなければもう終了している」 「何だと?」 前へ |次へ |
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