《MUMEI》
インパクトのある言葉
「ストーリーに入る前に、説明文がある」
「説明文?」火剣が聞いた。
「タイトルを決めたら、次に考えなければならないのは作品の説明文や概要だ」
「面倒くせえな。テキトーじゃダメか?」
「火剣」激村の目が光る。「せっかくタイトルをクリックしてもらっても、作品の説明文が今いちなら、ほかへ飛ばれてしまうぞ」
「それは困る」
「ならここは重要な部分だ。数行の短い文で読者に『読みたい!』と思わせるんだ」
「難しいですね」
「簡単だ」
「簡単なら解説してくださいよ」仲田が口を尖らせる。
「何だ、その反抗的な態度は?」火剣が燃える。「ジャイアントスイングからの逆エビ固めを食らいたいか?」
激村は火剣を無視して話を進めた。
「作品の説明文はダラダラ長くないほうがいい。本の表紙も欲張って言葉をゴチャゴチャ並べるより、印象的な言葉を短く放ったほうが、インパクトがある」
「インパクトは大事だ」火剣が叫ぶ。「ディープインパクト翼を広げた! 間違いなく飛んだ!」
「何の話をしている?」
「うるせえ」
「…読者の気持ちを引きつけて、心を掴む」
「掴む?」火剣は仲田の額を大きな手で掴んだ。「鉄の爪、アイアンクロー!」
「やめてください」仲田が振り払う。
「…最初の1ページで読者に『面白そうだ。最後まで読みたい!』と思わせるには、引力のある言葉を放つことだ」
「どんな言葉がありますかね?」仲田が究極の質問をする。
「売れるキーワード。人を引きつける魔法の言葉。心を奪うマジックワード。これらは多くの作家やコピーライターが研究し、追求している」
「難しそうですね」
「簡単だ」
「私は世界的な文豪だけでなく、超一流のコピーライターからも文章術を学んでいる」
「ほう」
「連相」
激村は無視し続けた。
「まえがきも、ただあらすじを書くわけではなく、戦略的に攻めることが大事だ」
「戦略的?」
「激村」火剣が強引に割って入った。「まえがき、あとがきは両刃の剣だ。書かないほうがセンスを感じる場合もあるぜ」
「さすが火剣。高度なことを言うじゃないか」
「二階から喋るのはよせ、この上から目線男」
「何だと?」激村が睨む。
「失礼ですよ火剣さん」
「うるせえ。まえがきなしにいきなり始まるのもセンスだ」火剣が力説する。「小説はセンスが大事だ。扇子じゃねえぞ」
「滑ってますよ」
「うるせえ」
「感性だけは磨くしかない。毎日センスのある文章に触れること。世界中の名作、傑作、良作を読みまくるんだ。毎日書くと読むの繰り返しで錬磨するしかない」
仲田は緊張の面持ちで言った。
「小説はやはり難しいですね」
「簡単だ」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫