《MUMEI》 実戦スパーリング「凄く気になることだけどよォ、タイトルをエキサイティングなヒロインたちと謳っておきながら、全然ヒロインが出て来ないというのはよォ、反則を通り越して詐欺だぞ激村」 「火剣。いい質問だ。真夏に雪が降るな」 「どういう意味だ?」 激村は答えた。 「そのうちヒロインは出てくる。まあ少し待て」 「ヒロインなんかいいですよう」仲田が言った。「横道にそれずに話を進めましょうよ」 「仲田。俺様のセリフを横道にそれてると思っているのか? まだまだ青いな」 「何が青いですか失礼な」 ムッとする仲田に火剣は余裕の笑顔で返した。 「俺様とテメーらのやりとりはなあ、会話のテンポ。キャッチボールの模範演舞だ」 「ドッジボールの間違いじゃないのか?」 「自惚れてますね火剣さんは」 「二人がかりの攻撃とは卑怯な」 激村は強引に本題に入った。 「模範演舞はいいから…」 「模範愛撫?」 「黙れ。ノゲイラは柔術マジシャンと呼ばれた。我々も言論マジシャンと言われるくらいに語彙を増やしたい」 「俺様は巷で言葉の魔術師と呼ばれている」 「初めて聞きました」 「うるせえ」 まとまらない。 「そうだ激村。実戦スパーリングしようぜ」 「一人でやってください」仲田が言った。 「バカだな仲田。言葉のトレーニングだ」 「何だ」 「いいだろう」激村も乗った。「創作について、小説について、芸術について語り合う言葉の実戦スパーリングは、必ず作品に生かされる」 「よし、では自分がインパクトがあると思う言葉を挙げろ。同じ言葉を言ったらお手つきドロップキックだぞ」 「そんなルールはいらない」激村が即却下した。 「言葉のトレーニングですか。面白そうですね」 「じゃあ俺様から行くぜ。裸。次はかだ」 「だれがしりとりをすると言った?」 「そうかそうか草加せんべい」 「はあ…」仲田が脱力。「関東にしか受けませんよ」 「横道にそれるのはよそう。引力のある言葉…闘争力」 「過激だなあ。仲田は?」 「ふ、不屈?」 「聞くな。俺様を見習って自信満々に答えろ。裸の次は全裸だ」 雲行きが怪しくなってきた。 「発信」激村が言った。 「メッセージ」 「素っ裸」 「エキサイト」 「スリリング?」 「真っ裸」 「強烈」 「痛烈」 「スッポンポン」 激村がイエローカードを出した。 「火剣。まじめにやれ」 「バッファロー! たぶん俺様の言葉が一番クリックされるぜ」 「反則ですよ」 「うるせえ」 前へ |次へ |
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