《MUMEI》

各々の心情を隠して
微妙な空気の中で、
夕食は進みます。


『あ、丸山さん。そ
のコロッケには、こ
の手作りソースを掛
けた方が美味しいで
すよ。』


『えっ、あ、そうで
すか?ありがとう、
萌子さん。』

そう言って、私の持
つソースへと伸ばさ
れた丸山さんの指先
を見た瞬間…口をつ
いて出た言葉。

『…っ、丸山さんの
指は…器用そうです
ね。』

『は?ははっ、ま〜
器用っちゃあ、器用
ですかね?新聞紙と
か、きつく縛るのは
得意ですよ。』


…きつく縛るのが得
意?……萌えキター


《萌子・脳内妄想》

『くっ、あっ…』

愛一郎の顔が苦痛に
歪んだ。しかし、漏
れた声音は甘さを含
み淫靡な香りを漂わ
せる。


『ふふふっ、痛いだ
けじゃないよな?愛
一郎?』

汗に光る愛一郎の躯
は、丸山の手によっ
て、赤い紐で縛られ
ている。

その白い肌に赤い紐
が良く映えて、見事
な亀甲模様が出来て
いた。


『…っ、丸山ぁ、お
前、こんな…何処で
覚えて…くっ…』

身動きした愛一郎の
躯に、紐が食い込み
痛みと快感が同時に
沸き起こる。

『ん?俺って器用だ
からさ〜独学?本見
て覚えた感じ〜』


………………………


『独学で亀甲縛りっ
てぇ〜丸山さん、器
用過ぎっっ!!』


『はい?亀甲縛りっ
て…萌子さん?』

脳内妄想ただ漏れな
私とドン引きな彼等
二人。

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