《MUMEI》 爆笑を生むセリフ暴力教室の様相を呈してきた授業。仲田は身の危険を感じていたが、必死にノートにまとめていた。 「タイトルが決まり、作品の説明文も書いた。そこでストーリーを書くうえで武器になるのがギャグだ」 激村の言葉に火剣が笑顔で応じた。 「ギャグは俺様に任せろ」 「任せられません」 「仲田。そういうこと言うとカナディアンバックブリーカーからのパワーボムだぞ」 「プロレス知らない人は技の名前言ってもわからないから置いてけぼりですよ」 火剣はすかさず幽霊のような声を出す。 「おいてけえ〜。おいてけえ〜」 「何ですかそれは?」 「知らないのか本所七不思議の置いてけ堀。さては、まんが日本昔ばなしを見ていなかったな。ぼーやー…」 「歌わなくていい」激村が止めた。「正直ギャグというのは難しい」 「簡単だ」 「そうやって同じギャグを何度も繰り返すのは得策とは言えない」 「バッファロー!」火剣が得意満面に力説する。「このしつこさが実は高度な技なんだ。わかってねえな。ギャグの極意が」 「どう高度なんですか?」仲田が疑いの眼差し。 「いい質問だ仲田。何度もしつこく放てばローキックやボディーブローのように効いてくるんだ」 「またK-1の話ですか?」 「K-1は比喩だ比喩。そもそもK-1の話は初めて語ったぞ。テメーは記憶力がねえのか? それともプロレスとK-1の区別がつかない田舎のおばあさんか?」 「暴言はよせ」激村が注意した。 「冒険は大事だ」 「火剣の言う通り、どういうギャグが受けるか。これは本当にわからない。昔人形劇をやっていたからよくわかる。大爆笑を狙えると思ったギャグが滑ったり、受けるつもりで言ったセリフじゃないのにバカウケしたり」 「なるほど」 「滑ることを恐れちゃいけねえ」火剣が真顔で言う。 「経験を積めば、どういうものが受けて、どういうギャグが受けないか。段々わかってくる」 「でも小説だと、受けたかどうかわかりませんよね?」 「まずは会話だな」激村が答えた。「1対1の会話。小人数の座談でギャグを飛ばしてみる」 「最近の芸人はハズすことによりウケてるが、まあそれも一つの技だな。滑ったあとのリアクションが大事マン兄弟だ」 「滑ってますよ」 「だれがマスカラス兄弟や?」 「言ってません」 前へ |次へ |
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