《MUMEI》
序章
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小さい頃からリュウジは弱虫だった。木登りをしていたら降りれなくなって幹にしがみついて震えていたし、夜中風が窓ガラスを揺らしただけで怖がって泣き出していた。

その度にわたしが、真っ青な顔をした彼を助けに木に登ったり、頭まで布団を被って啜り泣いている彼に添い寝してあげたりしていた。

わたしとリュウジはいつも一緒にいた。一緒にいることが当たり前だった。

リュウジの手助けをするのは日常茶飯事で、大人になった今でもそれは変わらない。


だからまさか、そんなリュウジがわたしの前から、何の前触れもなく忽然と姿を消してしまったときは、本当に驚いた。信じられない気持ちでいっぱいだった。



そして、

当たり前だった『日常』が、大きく崩れ始めたのだ。



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