《MUMEI》
駅前で
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そんな昔の記憶を辿りながら大学から帰る途中、駅前で突然声を掛けられた。母親くらいの年齢の、見知らぬ女の人だった。
話を聞いてみると、どうやら人を探しているということらしかった。1年ほど前、彼女の娘さんが突然失踪したのだという。「心当たりがあったら連絡して欲しい」と、一枚のビラを手渡された。『この人を探しています』という文字が目に入った。女子高生の写真と、連絡先も記されていた。

ビラから目を離し、彼女の顔を見つめながらわたしは微かに頷き返した。彼女はほんの一瞬だけ悲しみに顔を歪ませ、それからわたしに向かって深々と一礼すると、ひらりと身を翻した。そして、わたしの時と同じように別の人へ声を掛けていた。わたしはもう一度ビラを見つめた。

写真の中の少女は、こちらへ向かってにこやかに微笑んでいる。髪が長く、八重歯が印象的な、清楚なイメージの可愛らしい子だった。濃紺のセーラー服を身に付けていた。見覚えのある制服だと思った。


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