《MUMEI》

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そこには大きな木がひとつ生えていた。空に向かってたくさんの枝を伸ばしている様子は、天空の神に祈りを捧げているようだった。

その、枝のひとつに、

何かがぶら下がっているのが見えた。


『それ』は枝に紐のようなもので吊るされているようだった。
だらしなく垂れ下がった『それ』は、黒っぽい布を纏っていて、その隙間から手と足のようなものが見えた。巨大な黒いてるてる坊主みたいだと思った。

微かに風が吹いた。枝に括られた紐がギィ…ギィ…と嫌な音を立てた。黒いてるてる坊主の長い黒髪がさらりと儚く揺れた。肉の腐った臭いが流れてきた。視線を巡らせると、地面に茶色のローファーがぽつ、ぽつ、と落ちていることに気がついた。

「ぼく達の罪の『証』だよ…」

リュウジはそっと呟いた。目の前で吊るされている少女の両足は振り子時計のように規則正しく、いつまでも揺れていた…。



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