《MUMEI》 . ―――可哀想なリュウジ。 わたしは、そっとリュウジの肩に触れた。リュウジは泣き濡れた顔をゆっくり持ちあげた。目が合った。リュウジは空虚な瞳でわたしを見つめていた。 わたしはリュウジの肩や背中をさすってあげた。リュウジはぼんやりした眼差しを向けるだけだった。 もはやリュウジは泣くことしか出来なかった。母親に抵抗することも、やり返すことも諦めていた。全てに怯えていた。 そんな臆病なリュウジの為に、わたしがしてあげられることは何だろう? いつものように啜り泣いているリュウジの傍らで、わたしは考え、そして、閃いた。 ―――リュウジが泣いたら、わたしが助けてあげる。 そんなことを思いつき、わたしは彼の目を見て言った。 「…もう、大丈夫だよ」 リュウジは微かに、頷いた。 ****** 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |