《MUMEI》

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わたしは車へ戻り、未だ混乱しているリュウジに少女を後ろのトランクへ入れるよう言った。リュウジは困惑していた。「なぜそんなことをするのか?」と何度も尋ねられたのだが、わたしはろくに説明もせず、とにかく言う通りにするよう言い聞かせた。リュウジは嫌々少女をトランクへしまった。その間も少女は目を閉じたままだった。

わたし達は車に乗り込み、夜の闇の中を走り出した。


少女を連れてわたし達は山へ向かった。山道の路肩に車を停め、トランクから少女を出し、森の奥へ運んだ。リュウジが抱える少女の長い黒髪が歩く度さらさら揺れていた。


真夜中の森は静かだった。空を見上げると、木々の葉の隙間から妖しく光る三日月がわたし達を覗き込んでいた。吐く息が白く浮かびあがっては闇に溶けて消えた。

一本の立派な木の根元へ少女を寝かせた。少女の顔は月明かりに青白く輝いていた。



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