《MUMEI》

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わたしはリュウジに少女を埋めるように言った。そうしなければならないと強く命令した。わたしは必死だった。とにかく少女を隠さなければリュウジは警察に捕まってしまうに違いなかった。彼を助けるには少女をどこかへ隠さなければならなかった。リュウジを守ってあげたかった。しかしリュウジは泣いて嫌がった。「そんな恐ろしいことは出来ない」と情けない声で反論してきた。

わたし達は少女の躰を間に置いたまま、しばらく言い争っていた。冷たい森の中でわたし達の声だけが反響していた。わたし達の口論はいつまでも平行線で終わりが見えなかった。

そうしてどのくらい経ったのか。
不意に足元から呻き声が聞こえた。わたし達はぞっとして恐る恐る視線を下へ向けた。目を閉じていて寝そべっていたはずの少女が、いつの間にかこちらを見つめていた。少女の顔が恐怖でひきつっていき、それに対してリュウジの顔が見る見る青ざめていった。リュウジは「生きてた…」と呟いた。まずいと思った。わたしは咄嗟にトレンチコートのベルトを抜き、その端を両手で握りしめ、少女の首元へそれをあてがった。

大きく見開かれた彼女の美しい瞳に恐ろしい顔をしたわたしの姿が映っていた…。



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