《MUMEI》

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「彼女には可哀想なことをした…」

遠い目をしてリュウジは小さくそう言った。わたしは頷いた。すると彼はわたしの顔を覗き込んだ。刑事が犯人に向けるような鋭い眼差しだった。

「…ぼく達は罪を償わなければならない」

リュウジの言った意味がわからなかった。彼は持っていた鞄を開き、中からロープを取り出した。その両端を握り、わたしに見えるように掲げた。ピンッと張ったロープは今、リュウジの手の中にある。

「…このままでは二人ともダメになってしまう…だから、わかってくれ」

その言葉でようやくわかった。リュウジはわたしを消すつもりなのだ。彼の為に人を殺したわたしを。
彼は続けた。

「…最初から間違っていた。お母さんのことも、この女の子のことも…ぼく達は罪を重ねすぎたんだ」

わたしはあなたを守っただけよ?

そう言うとリュウジは首を横に振った。ロープを持つ手がブルブル震えている。

「…ぼくは、君にこんな恐ろしいことをさせる為に、一緒にいたわけじゃない」

わたしを殺す気?

リュウジは答えなかった。ただ泣きそうな顔をしていた。


「もう、終わりにしよう…」


呟いたかと思うと、リュウジが目の前にゆっくり迫って来た。

ギィ…ギィ…と紐が軋む音が響いていた。



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