《MUMEI》
リュウジの最期
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大学から家に帰り、ベッドの上に鞄を置いた。ふと目を遣ると鞄から適当に折り畳まれた紙がはみ出していた。駅前で貰った少女のビラだった。おもむろに抜き取って開いてみた。少女の顔写真が目に入る。半年前、リュウジと一緒に見た死体と同一人物には到底思えなかった。

しばらく眺めていたが興味が失せて、ビラを適当に投げ捨ててキッチンに向かった。お腹が空いていた。そういえばもう夕飯時だな、と他人事のように考え付いた。

キッチンで夕飯の支度をしていると、呼び鈴が鳴った。玄関を開けると、二人組の男の人が立っていた。そのふたりは警察であると名乗り、ドラマみたいに手帳をちらつかせた。「ナガタさんですね?」と、わたしの名前を確認してから余所行きの笑顔を張り付けると、断定的な言い方でこう続けた。


「…署までご同行願います。お話を聞かせていただけますよね?」


わたしはふたりの顔を見て、素直に頷いた。



―――いつか、こんな日が来るとは思っていた。



森の中に眠る少女の隣に、リュウジの死体を並べて吊るした、あの半年前から、ずっと。


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