《MUMEI》
終章
.


リュウジは消えてしまった。わたしはリュウジを守るために存在していた。わたし達はずっと一緒だった。リュウジが消えた今、わたしには存在する理由がない。守るものがなければ、意味がないのだ。

どうすればいいのだろう?

わたしは考え、そして思いついた。


―――そうだ。

新しい『リュウジ』を生み出せばいいのだ。


リュウジも自分を守るためにわたしを作り出した。リュウジに出来たことがわたしに出来ないはずがない。


だって、わたしとリュウジは同じ身体に存在していたのだから…。


狭く冷たい独房の中、わたしはゆっくり瞼を閉じた。静かで黒い空間は森の雰囲気に似ていた。
瞼の裏に広がる暗闇の中に、うっすらと影が見える。膝を抱えて肩を震わせている『誰か』がいた。この世の全てに怯えている、わたしの中の『誰か』。死んでしまったリュウジのように長い付き合いになるだろうか。

わたしは『誰か』に手を伸ばした。



こっちにおいで。

怖がらないで…わたしが守ってあげる。


―――もう、大丈夫だから…。


優しく呼び掛けると、『誰か』はゆっくり振り向いた。

幼い頃のリュウジにそっくりな、悲しそうな目をしていた。




-FIN-

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫