《MUMEI》 終章. リュウジは消えてしまった。わたしはリュウジを守るために存在していた。わたし達はずっと一緒だった。リュウジが消えた今、わたしには存在する理由がない。守るものがなければ、意味がないのだ。 どうすればいいのだろう? わたしは考え、そして思いついた。 ―――そうだ。 新しい『リュウジ』を生み出せばいいのだ。 リュウジも自分を守るためにわたしを作り出した。リュウジに出来たことがわたしに出来ないはずがない。 だって、わたしとリュウジは同じ身体に存在していたのだから…。 狭く冷たい独房の中、わたしはゆっくり瞼を閉じた。静かで黒い空間は森の雰囲気に似ていた。 瞼の裏に広がる暗闇の中に、うっすらと影が見える。膝を抱えて肩を震わせている『誰か』がいた。この世の全てに怯えている、わたしの中の『誰か』。死んでしまったリュウジのように長い付き合いになるだろうか。 わたしは『誰か』に手を伸ばした。 こっちにおいで。 怖がらないで…わたしが守ってあげる。 ―――もう、大丈夫だから…。 優しく呼び掛けると、『誰か』はゆっくり振り向いた。 幼い頃のリュウジにそっくりな、悲しそうな目をしていた。 -FIN- 前へ |次へ |
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