《MUMEI》
重くならない方法
激村は、嵐のような火剣の攻撃をかいくぐりながら、授業を進めた。
「プロが放つメッセージが必ずしも正しいとは限らない」
「デタラメ書いてる作家はたくさんいるな。大丈夫か激村は?」
「火剣さんこそ大丈夫なんですか?」仲田が睨み顔で聞く。
「大丈夫だ。言論の自由。表情の自由は拳法で保障されている。アチョー! ハイー!」
高い声を出しながら仲田を叩く真似をする火剣に、仲田は冷静に言った。
「だからギャグの授業は終わりましたから」
「憲法で保障されているからこそ、『あの者の発言は間違っている』と攻撃することはできない」激村が力説する。「だからこちらもそれを上回るメッセージを放ち、民衆に『こっちの主張が正しい』と思わせるしかない。まさにメッセージ同士の対決だ」
「激村が喋ると重苦しい空気になるな」
カウンターのランニングネックブリーカーに、激村は少し怯んだ。
「火剣さん。言ってるそばから言葉の暴力ですか?」
「そばよりラーメンのほうが好きだ」
「自分が言論の自由を侵害されたら暴れるくせに」
「当たり前だのアキラよ」
「滑ってますよ」
「テメーが一番言論の暴力をふるってるぞ仲田」
「火剣さんには負けますよ」
「仲田。俺様は言論の暴力じゃなくて本当の暴力も使うぞ」
「火剣」激村が止めた。「そんなことしたらアトミックドロップを炸裂するぞ」
授業が荒れまくる。
「たった一度の人生だ。重くならずに面白おかしく生きようぜ」
「それが火剣さんのメッセージですか?」
「昔から笑う門には待ちかねたね福来たるって言うだろ?」
「言いません」
「笑わせるのは大事だ。だから俺様はヒロインの手足を縛り、くすぐりの刑で責める」
「退場」仲田が廊下を指差す。
「貴様のはメッセージになっていない」激村が怒る。
「そこまで言うなら激村。重くならない方法を教えろよ」
「斬新で刺激的なメッセージを作品の中に溶け込ませることだ」
「溶け込ませる?」仲田が興味を持った。
「メッセージをそのまま説明文のように書いてしまったら論文になってしまうから、小説全体にメッセージを溶け込ませる。セリフで語ったり、あるいは表情の描写でメッセージを読者に伝言する」
「難しいですね」
「簡単だ」
「簡単ならやってください」
「溶かせばいいんだろ?」火剣が笑う。「ヒロインの両手を拘束したらスライムで服だけ溶かすんだ」
激村は襲いかかると、火剣のバックを取って高々と持ち上げた。
「メッセージになってない以前にパクリじゃねえか!」
アトミックドロップ!
「バスター!」と叫びながら火剣は教室の後ろの壁に頭から行った。「ズ…」

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