《MUMEI》

佐藤は藤本の方を見上げて見せる
「可愛いね。よく似合ってる」
佐藤の姿にご満悦な笑顔の藤本
徐に携帯を取り出したかと思えば、写真を撮っていた
「な、何勝手に撮って……!」
「中の写真ゲット。保存していい?」
「だ、駄目!」
「えー。何で?」
子供の様に不手腐った様な顔をしてくる藤本へ
佐藤はその携帯を取ろうと背延びをしながら
「恥ずかしいもん。だから駄目!」
何とかその写真を消去させようと試みていた
だがそんな佐藤の反撃もむなしく、藤本は写真を保存してしまう
「誰にも、見せないから」
だから見逃して、と両手を合わせお願いされてしまえば
それ以上、佐藤は文句を言い募る事など出来なかった
「……変な事に使ったりしたら、承知しないから」
「へ、変な事って、中……」
一体何を想像したのか、複雑そうな表情を浮かべる藤本
困った様な笑い顔に段々と変わっていくソレを
今度は佐藤が仕返しと言わんばかりに写真に収めていた
「これで、お相子ってことにしといてあげる」
携帯越しに見える藤本へ
佐藤は本人には見えない様、画面の彼へと微かに笑みを浮かべて見せる
「……中、今日、何かあった?」
「え?」
突然の藤本からの指摘
少なからず覚えがあった佐藤がつい驚きを表情に出せば
「話、良かったら聞かせてくれる?」
佐藤の顔を隠している携帯を横へと避け、正面から顔を覗きこませてくる
動揺に瞬間言葉を失ってしまったさとうだったが
すぐに、今日あったことを話し始めた
「……そか。頑張ったね。中」
佐藤の話を最後まで聞けば
どうしてか、藤本も嬉しそうな表情を浮かべて見せた
自分の事の様に何故喜んでくれるのか
ソレを不思議に思い、首をかしげて見せれば
「中が嬉しそうだから。だからオジさんも嬉しいの」
返ってきた答えには更に笑顔のおまけつきで
その笑みに中てられ、佐藤はつい顔を伏せてしまう
「……アンタと居ると調子狂う」
「は?」
行き成りのソレに藤本は虚を衝かれたような表情
一体どうしてなのかと首を傾げて向けてきた
「……アンタの馬鹿正直が移ったの。どうしてくれるわけ?」
最早八当たりでしかないソレを向けてやれば
藤本は僅かに肩を揺らす
「やっぱり、オジさんは嬉しいよ」
「何が?」
「中の表情が豊かになってきたこと。オジさんはソレが一番嬉しい」
偽ることのない本心なのか
向けられる笑顔はいつも以上に優しげなソレで
ゆっくりと、藤本の指が佐藤の髪を梳き始める
「いっぱい、話して。全部聞いてあげるから」
「……!」
耳元で呟かれた低い声に
佐藤は顔を赤くし、また俯いてしまう
恥ずかしさに暫く耐えていたがすぐ限界に達し
慌てて身を翻していた
「じゃ、じゃあ、私帰る!」
「中?」
「明日、学校終ったら、来るから!」
「ちょっ……、どうしたの?」
「じゃ、また明日!」
行き成りの事に動揺し始める藤本を取り敢えず放置し
佐藤は逃げる様に、その場を後にしたのだった……

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