《MUMEI》

『あっ、英人…』

話している総一郎と
神品を見付け満面の
笑顔で駆け寄る隆。


『隆〜!』

すると、途端に破顔
した神品が隆へと駆
け出した。


…えぇっ、神品〜?
ちょっお前、俺と隆
に対する態度違い過
ぎるだろう?…って
………あ、あれ?…


『えっと、あれ?』

総一郎は、神品の姿
をじっと眺めた。


今まで、自分の隣に
いた神品と今、隆の
隣にいる神品は、明
らかに笑顔や纏う雰
囲気が違うのだ。


『…何で、か?』

なんて事は、鈍感な
総一郎にも直ぐに解
った。
相手が好きな人だか
らだと。


《あ、じゃあ?》

そして…気付く。


《まさか、世良?》

もしかして?あの笑
顔や雰囲気は、俺に
だけ特別に向けられ
ていた物なのか?


咄嗟に世良の方を見
れば、偶然視線が交
わる。総一郎が強張
る顔で会釈すれば、
世良も軽く笑顔で返
した。

その笑顔は、いつも
総一郎に向けられて
いる物では無い笑顔
だった。

その笑顔を向けられ
た時、何故か胸がチ
クリと痛くなった総
一郎。


《??》

その胸の痛みに首を
捻りながら、その後
の講義中ずっと、何
かを考えながら世良
を見続ける総一郎。


その姿は、周りから
見ると不気味な不審
者そのものでした。

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