《MUMEI》

「いいじゃん椎名。
僕の作戦の意図を良くわかってる。」



赤高ベンチ。



「ポストに落としたからすか?」



「それもある。」



「あとは?」



「穴。」



「穴って…さっき言ってた?」



「そそ。」



「どこが穴なんすか?」



「い〜から見とけ。
そ・の・内!!わかる。」



「???」



(今はまだそこから攻める気はないみたいだね。


僕の考えを確認しに行ったって感じかな?


てことはやっぱ椎名も薄々気付いてたんだ。


向こうのディフェンスの致命的な穴に。


いきなりそこばっか攻め込んで向こうに気付かせるのも勿体ないし。


ペース配分は椎名に任せて良さそうかな。)















………………………………



クロの考えの通り、


椎名は既に秀皇ディフェンスの穴に気付いていた。


今のプレーは疑惑を確信に変える為のプレー。


穴に気付いた以上、


後はそこに攻め込むタイミングを伺うだけ。


今はまだその時ではない。


そう判断した椎名は、


キーパー上野の特色を利用したプレーで自分の狙いを誤魔化す。


それが千秋へのポストパス。


試合序盤、


初見のシュートに対し、


探りを入れる癖のある上野。


その情報はクロにより試合開始前から選手たちに伝えられている。


上野に対し対面したことのないシューターが投入された時点で、


その選手にシュートを打たせる算段を、


椎名の頭はしっかりと考えていた。


このプレーが綺麗に決まり、


赤高はスコアでの優位を得ると同時に、


秀皇ディフェンスの致命的な穴を発見。


攻め手に悩まされる事態を、


試合序盤のこの時点で回避することに成功していた。



………………………………














(さて…攻撃はOK。


期待以上の動きをしてくれてる。


問題は次。ディフェンス。


期待通りの動きしろよ…千秋。)

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