《MUMEI》
氷室千守君と渡部志雄君
氷室様の別荘に招かれて、それがサバイバルであった時点で俺は何かに味方されている気がしたのだ。
今日はいつもの自分用の麻紐と別に、あの憎き明石珠緒の首に括らせる分も準備しておいてある。
なに、あいつなんて少しくらい締めておいた方が大人しくなって調度良いだろう。

「志雄君、宿題の最後の問題どうやって解いた?明日から旅行になってしまうし勉強付いて行ける自信無いなあ。」

脳天気に話し掛けてきやがって。


「教科書の手順だけど。」

テキトーに出した教科書の答くらいに返してやる。


「あれは、次の解き方の為の前置きだから俺と今度先生に聞きに行こう。」

志島って、隙が多い……これだから千秋様に飽きられるんだ。


「主人の前で私語は慎め!」

氷室様は容赦無く明石と志島を攻撃してきた。


「ギャッ、ごめんなさい!」

二人で叫びながら、反っくり返るのを横目にムラムラしてくる。
狡い狡い……自分だってその足で踏みにじられたい。

「ギャアアアア!ギャアアアア!ギャアアアア!」

狂人の如くのたうちまわる顧問の楠が後々、連れて来られる。どうやら、いつものメンバーのようだ。


「明石君、隣良い?」

機内で氷室様と隣り合わせになろうとする明石の図々しさに見るに見兼ねて話し掛けてしまう。


「視界を汚すな。」

なんと、氷室様が話し掛けて下さったどころか、ストッキングを頭から被せて下さった……!
幸せだ。


「……お前がそれで良いなら何も言わないよ俺は……。」

志島からやっかみの言葉を投げられた。
男の嫉妬なんて醜いな……もっと可愛がってもらって、明石に見せ付けたい。

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