《MUMEI》
0001. ラジオは、ハッピーメリークリスマス
『誰もいない……。』

まだ、少女は、潤んだ瞳で、空を見上げる。虚空には、まだ、出たばかりの満月が、あがっていた。

冷たい風が、身体を揺らす。近くに放置された、乗用車のラジオからは、ジョン・レノンの『happy merry christmas』が、流れていた。

『誰だろう。』

少女は、其の声を、十分に聞くと、身体を起こして、ゆっくり、脇道の歩道を歩きだした。


『静かね……。』

虫たちの鳴き声だけが、遠くに響いていた。

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