《MUMEI》
ファーストシーンが勝負
「さて、タイトルが決まり、作品の説明文も書いて、いよいよファーストシーンを描く」
「27章でようやくファーストシーンか?」
「貴様がいるからだ」
「どういう意味だ?」
激村は続けた。
「ファーストシーンを外せばほかへ飛ばれてしまう。読者が最初から最後まで読んでくれると思ったら大間違いだ」
火剣が同意する。
「俺様も確かに1ページ読んでやめることもあるな。ファーストシーンは大事だ」
「映画館ならお金がもったいないから最後まで見るが、つまらなければ寝てしまう」
「本も買えば最後まで読むかもしれません」仲田が言った。
「俺様は時間を選んで本をぶん投げるな。こんなんで金取るなって本は実際あるからな」
「Web小説ならなおさらだ。退屈なシーンが続けば即ほかへ飛ばれてしまう」
「いちばん厳しいリングだな」火剣がつくづく言った。
「そうですね」
「格闘技の試合もファーストコンタクトが大事。小説もファーストシーンが非常に大事になってくる」
「コツはありますか?」仲田が真顔で聞く。
「ヒントになるのはテレビドラマの第1話のファーストシーンだ」
「連ドラだな」
「そうだ。1話のファーストシーンで最終回まで見ようと視聴者の心を奪う必要がある」
「大変ですね」
「簡単だ」
「テレビドラマは視聴率という恐怖の数字が弾き出される。退屈なシーンが続けばCMの間にチャンネルを替えられてしまう」
「Webと似ているな」火剣が言った。
「その通り。どんなファーストシーンが受けるか。これはだれにもわからない」
「わかるぜ」
「教えてくださいよ火剣さん」仲田が怖い顔で聞く。
「ファーストシーンをバスルームにする」
「はいはい」
「ヒロインが熱いシャワーを浴びながらセクシーで魅惑的な裸体を惜しみなく披露する」
「それも一つの手だが毎回シャワーシーンというわけにも行かない」
「じゃあ、いきなり手足拘束から始めるか?」
「アルゼンチンバックブリーカーを食らいたいか?」
「NO!」火剣は両手を出しながら首を左右に振った。
仲田が意見を述べる。
「大ヒット映画のファーストシーンも記憶していると、作品に生かせますよね?」
「仲田。たまにはいいこと言うじゃねえか?」
「火剣さんに言われても困りますが」
「何だと?」
「実例を挙げよう」激村が言った。「リーサルウエポン2はいきなり激しいカーチェイスから始まった。前置きがない始まり方は読者に読む気を起こさせる」
「ゴングと同時にランニングネックブリーカーは効くな」火剣も同意した。
「風の谷のナウシカのように、嵐の前の静けさを醸し出すファーストシーンも引き込まれる」
「描写が難しそうですね」
「簡単だ」
「じゃあ書いてくださいよ」
「うるせえ」

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