《MUMEI》

一方、世良は絡み付
く視線に戸惑いを隠
せなかった。


…な、なんか俺の事
見てる?あの人。ま
さかね、なんかした
か、俺?


『なぁ、世良』


隣の友人が、ヒソヒ
ソと話し掛けてくる


『ん?』


『お前…恨みでも買
ったか?あの人に』


※あの人とは、勿論
総一郎の事である。


『いや、心当たりな
いな。』


そう言った世良に青
ざめた顔で囁く。


『ヤバいよ、お前。
さっき、俺、神品に
聞いたけど…あの人
韓国人留学生でさ、
女だてらに拳法の達
人で熊殺しの異名を
持ってるらしいぜ!
下手したらお前、命
落とすぜ』

※拳法の達人とは、
神品が流した、総一
郎の正体がバレない
様に、皆を接近させ
ない為の嘘である。


『ゲッ!マジで?』


ゴクリと唾を飲み込
む。背筋にヒヤリと
したモノが流れた。


恐る恐る振り返れば
話しのあの人と目が
合う。


『!!』


不自然な作り笑顔の
あの人に、当たり障
りの無い会釈を返す

と、何が気に入らな
かったのか、その後
もずっとガン見され
続け、一日の講義が
終わる頃には、疲労
感もピークを迎えた


結局、丸一日あの人
と同じ時間割だった
なぁ、と少し不気味
に感じた世良なので
す。

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