《MUMEI》 描写のトレーニング法「描写のトレーニング法を忘れないうちに語っておこう」 「横道にそれるな激村」火剣が焦る。 「何一つそれてません」仲田が冷静に言った。 「仲田。そういう生意気なこと言うとアマゾネスの刑だぞ」 「何ですかそれは?」仲田がそれる。 「男子禁制のアマゾネス軍団がいる島に生贄として仲田を送る…どわあああ!」 ダイナマイトキックが火を噴いた。 「貴様の短編はいい!」 火剣を寝かせると、激村は教壇に戻った。 「では授業を続ける。描写のトレーニング法として、風景をペンでスケッチする」 「絵を描くんですか?」 「絵ではない。風景を見て文字で見たままをスケッチしていく。窓から見える街並み。ビルディング。家の屋根。川や山。この練習を常日頃からしておくと、リアルな風景を思い浮かべることができる。小説を書くときも、想像ではなく、実際に風景を見てスケッチするんだ」 「なるほど」 「練習しなければ上達はない」 「はい」仲田の目は燃えていた。 「ジャッキーチェンのスパルタンXはトレーニング風景から始まったな」 火剣が強引にファーストシーンの話に戻す。 「このファーストシーンは伏線でもある。二人がクンフーの達人だということを読み手に知らせる。これは重要なことだ」 「素晴らしい」仲田が感嘆する。 「あたぼーよ」 「火剣さんのことなんか誉めてませんよ」 「テメー、そんなにアマゾネスの生贄になりたいのか?」 乱れる火剣を押さえるように激村が言った。 「火剣が実例を紹介したように、ファーストシーンで伏線を張るというのも技術の一つだ」 「メモっとこう」 「メモるだと?」火剣が絡む。「メモるだとか、なるほりろとか、貴様、ちゃんとした日本語を使わないと作家になれねえぞ」 「バッファローはいいんですか?」 「あれはギャグだ」 「なるほりろもギャグです」 激村も加わる。 「美しい日本語も読んでいて気持ちが晴れるが、わざと崩すのも悪くない」 「俺様はわざと崩している芸術肌で、仲田は正しい日本語が使えない子どもだ」 「何ですかそれは?」仲田がムッとする。 「俺様に逆らったらアマゾネスの刑だぞ」 「くだらないです」 激村がまとめようとする。 「とにかくファーストシーンは勝負の分かれ目。インパクトのある続きが読みたくなるファーストシーンを探求したい」 仲田が語る。 「読者がつまらないと感じたら、即ほかへ飛ばれてしまうわけですね」 「その通り。ワンシーン、ワンシーンに全情熱を注ぎ込むんです。練りに練り、創意工夫した分だけ自分の実力となる」 「面白くない講義は終わったか激村? では次は俺様がアマゾネス…どわあああ!」 ジャンピングニーパット! 前へ |次へ |
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