《MUMEI》 残虐過ぎるのはNG!「西部劇によくある古い酒場でのバイオレンスシーンも好きだな」火剣が言った。 「確かに迫力があるな。チャールズブロンソンとか」 「一発のパンチでカウンターの向こう側までぶっ飛ばす。痛快じゃねえか」 「ブルースリーやゴルゴ13のような絶対的に強いヒーローも確かに痛快ですね」仲田が語る。 「バイオレンスシーンは痛快さが大事だ。残虐なのは良くない」激村も同意した。 「どういうシーンが残虐ですか?」 仲田の質問に答えようとした激村を遮り、火剣が答えた。 「例えば将軍の娘のように誇り高き戦士がよォ…」 「それしかないのか?」 「うるせえ。無理やり犯すのは残酷だな。一旦待って哀願の機会を与えねえと」 「話ズレてません?」 「一部にはストライクゾーンだ」火剣が笑顔でまくる。「有無も言わさず裸にして、手足拘束して、しかも乱暴に、しかも全裸だぞ」 「もういい」激村が強引に打ち切った。「あとは、指を折るのもあまり好きではない」 「そうですね」仲田が痛そうな顔をした。 すかさず火剣が語りまくる。 「そうだな。俺様なら待つね。生意気なヒロインをうつ伏せに倒して男たちが上に乗る。『離せ!』と暴れる女の腕を捻り、『イタタタタタ…』と足をバタバタするヒロインの指を掴んで曲げる真似」 「うわあ」 「大丈夫だ仲田。生意気なヒロインも指は困るから『わかった指はやめて!』と叫ぶ。男も鬼じゃねえ。哀願してる女の子の指は折らねえよ」 「よくスラスラと口が回るな」 「天才と呼びな」 「天才とは思わないが、寸止めは大事だ」 「おうよ。折っちゃいけねんだ仲田」 「はあ…」 火剣が得意顔で語る。 「寸止めがいちばんエキサイティングなんだ。指だけじゃねえ。脚でも腕でも同じだ。折ると言って折らない」 「大事ですね」 火剣が再び実演する。 「空手で暴れる強きヒロイン。しかし多勢に無勢。男たちに組み伏せられてしまう。格闘の心得のある男が容赦なくアームロック。『あああああ!』もがく女の腕を折る構え。『やめろ!』『やめろだと?』男は笑顔で腕に力を込める。観念した女は『わかったやめて』『俺の女になるか?』『え?』顔を紅潮させて慌てるヒロイン」 「カット」 「待て激村。ここからがいいところだ」 「誇りを傷つけてる時点で残酷シーンだな」 「僕もそう思います」 激村と仲田の二人がかりの攻撃にも火剣は怯まない。 「貴様らはまだまだ浅いな」 「浅くない」 「大衆が求めているものがわかってねえ。俺様の寸止めテクこそ究極のチラリズムマジックに裏打ちされた興奮のシーンを生む秘訣だ」 「……次に、乱闘シーンをリアリティーに描く方法について…」 「激村テメー。俺様の話に繋げろよ。シカトは許さねえぞ」 「貴様の場外乱闘に付き合ったら両者リングアウトになる」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |