《MUMEI》
再会
桜が舞いながら日本特有の国歌斉唱が聞こえてきている。

今は4月、全国高校生の入学式の時期であり、園池 秋(そのち しゅう)もこの日高校生として、私立蕎麦芒(そばのぎ)男子高等学校に入学する一人である。

金色に少し茶の入った髪に、やる気の無い薄い黒目にいかにも『不良』といったように高校の制服をダラけて着ている。
この入学式も「ダル」としか思っていないのだろう。

そんな園池 秋とは違い、黒髪、黒目で、制服をキッチリと着こなしているいかにも『優等生』というように、園池 秋の隣にいるのが倉永 英二(くらなが えいじ)である。

園池が倉永を見ていたら、園池に気づいたようで倉永が微笑んできた。
「秋ちゃん、・・・久しぶり。」 「あっ、ひ、久しぶり。」
園池は、曖昧に返事をした。
園池と倉永は親どうしが仲が良く、昔はよく二人で遊んでいたのだ。
園池も倉永も自ら『親友』と豪語するほど仲がよかった。

しかし、ある事件をきっかけに親たちの仲が悪くなり、二人も会うことがなくなった。そのうち倉永一家が海外に引っ越してしまったので二人が会うのは十年ぶりだ。

「英二、でっかくなったな」
「あの頃は秋ちゃんのほうが大きかったのにね」
「うっせー」
二人とも懐かしみを感じながら普通の友人のように話している。
「秋ちゃん、・・・ごめんね」
「なんだよ?急に」 「ずっと、ずっと謝りたかったんだ。・・・・あの日の事」
「なんだよ、俺は気にしてなんかいないんだからいいんだよ!」
「でも・・・」
「いいんだって!なんか親はまだいろいろ言ってるけどさ・・・その・・なんだ・・俺たち・・親友だろ!」
顔を真っ赤にしてゆう園池に思わず倉永は、
「秋ちゃん・・・・秋ちゃぁん!」
抱き着いていた。
「てっうお! ちょっ、まだ式の最中だって!」
言ってももう遅い、倉永は園池に抱き着き大泣きしている。

入学式早々注目の的だ。


しかし、笑う園池の顔はどこか暗い。

園池は思いだしていた。あの日の事件のことを。

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