《MUMEI》

「ぅ…あんな脂っこいモノよく食えるな…」
「やっぱり肉とか食えねぇんじゃん」
「ジャンクフードは無理だ…」

午後の授業中、同じ教室だった巽を遠巻きに眺めていたら、だんだん巽の顔色が悪くなっていく様子が見えたんで『…もしかして昼食のアレか?』と思い出して、何か悪いことしたなと思ってしまった。

「…なら俺ん家に寄ってくか?」
「はぁ…なんで…」
「気分も悪そうだし、それに…」

教室のイスに座ってため息をついていた巽に視線を向けると、巽もこちらを向いてきた。

その向けられた視線で急に緊張しはじめた気持ちを隠すように背中でギュッと拳を握り、覚悟を決めて話しかけた。

「近いし…それに俺、一人暮らしなんだ」


彼を一人で暮らしている俺の部屋に招き入れると、一人の部屋なんで当然横になれるソファーなんかが無かったんでドキドキしながら俺のベッドに招き入れた。

その部屋のドアを開けたまま、俺のベッドに横になっている彼を眺めながらキッチンへ行くと冷蔵庫からペットボトルに入っていた水を取り出した。

「の…飲めよ」
「あぁ…」

水を持って行ってそれを彼に渡すと、巽は俺をチラッと見ると気怠そうに起き上がり、その水に口を付けた。

「はぁ……何してる…」
「いや、苦しくねぇかな…と思って」

カップを口元から外して落ち着いていた巽のシャツに目をやると、キッチリと止めてあった襟元のボタンが目に入った。

チャンスだと思いその胸元のボタンに手を伸ばし、その堅苦しいボタンを外していった。

「そこまで外さなくてもいい…」
「いいよ、何なら着替えれば」

そう言ってクローゼットにあったスウェットを持ってきて巽に渡すと、訝しがりながらもそれを受け取ってくれた。

巽が着ていたシャツに手をかけてボタンを外していく様子をチラリと横目で楽しみながら見ていると、その手が止まり俺の方を睨んできた。

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