《MUMEI》
爪痕
「そういえば、自己紹介してないよね、ウチは綾峰巴(アヤミネ トモエ)トモって呼んでよね。」
ニコッと笑うと一礼。
「煉封院狩月です。えっと・・他のヒトたちは?」
洞窟での出来事を思い出しながら尋ねる。
「・・ロングッスもロシュも無事、結構重傷らしいけど・・生きてるよ。ボンカー君はもう退院できるはず。そうそう、ロシュから伝言で、お前が持ってる結晶はお前の分だから好きにしろ〜だって。」
少しの沈黙の後、巴は笑顔を浮かべてそういった。
「・・・・そうですか。すみません辛いことを聞いて。」
彼女と親しそうに話をしていた、アーチャーや、同じように広場に居たヒト達は・・「首狩」に殺されたのだろう。
「・・・クード、あのアーチャーだけどさ、立派に戦ったよね。「首狩」相手に、一歩も逃げずに戦ったんだよ?立派・・だよね。」
立ち上がり、少し離れると巴は空を見上げながら狩月に話す。
「・・・・・・」
どう答えれば良いのか解らず、沈黙する狩月。
「・・・ごめん、病室戻る。またね。」
「すみません。」
歩き去る巴に頭を下げる。
「気にしないの、ウチが勝手に話をしただけ。とにかく、お互い生きてて良かった。それでよし!」
振り返って明るく笑うと、病棟へと走っていく巴。
「・・・強いヒトなんだな。」
巴を見送り、ぼんやりと空を見上げる。空はいつものように快晴で、太陽が輝いていた。
「そういえば・・剣とか盾、どうなったのかな。」
ロックリザードに投げた後、拾った記憶が無い。ロナイなら知っているかな、そう思って病室へと戻る。
病室に戻ると、机の上にメモと〔患者56 荷物〕と書かれた布袋が置いてあった。ロナイは相変わらずベットで眠っているようだ。
「狩月へ〜お前の荷物だそうだ、持って帰ること。傷の具合は悪くないからもう宿に戻れ。  PS、睡眠の邪魔したら私刑  BYロナイ」
メモに目を通して、荷物を確認する。
「あ〜・・やっぱり剣も盾も無いや。ハンドから貰った指輪と、リースから貰った腕輪はある・・な。買い直すにしても・・お金無いよなぁ〜」
ため息をつきながら装備していく。
「アイテムホルダー、腕輪の中身も・・OK。って「ヴァイオレットマター」だっけ・・これ売れるのかな。」
腕輪の中をほぼ占領しているヴァイオレットマターの結晶。濃い紫色の水晶のように見える。
(・・琴にでも聞けばいいか。)
よし、と頷くと、寝ているロナイに一礼をして、病棟を出て、守護騎士団の詰め所を出ると・・
「テレパス 守護騎士団の詰め所に居るなら見れないと思うが・・返信できるなら返信を。By琴」
「テレパス 守護騎士のヒトに聞いたら生きてるって聞いて安心したけど・・動けるようになったならテレパスちょうだい!by想花」
「テレパス 俺も守護騎士団の詰め所に入院したかった・・怪我治ったら、飯でも奢れ!!byボンカー」
(あ〜・・・・最後のは無視かな。)
テレパスを返信し、宿へと戻る。
「テレパス ようやく動けるようになったよ。宿屋、玉華に今から戻るところ。心配かけてごめん。by狩月」
足元がフラフラするので、少し苦労しながら宿に辿り着く。
「お、お帰り。無事でなによりだ!一応、守護騎士から連絡は来てたから大丈夫だとは思ってたけどな〜姿見ると安心するな。」
宿に入ると、店主が笑顔で対応してくれた。
「心配かけたみたいで・・すみません」
「な〜に気にすんな!ちなみにココ3日分の宿泊代はイラネェぞ。ま、ゆっくり休めや!」
そういうと店主は豪快に笑い始めた。
「ありがとうございます。」
礼を言って部屋へと戻る。

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