《MUMEI》 ゆっくりと彼女の柔らかい髪に指を通す 顔を俯かせ目を合わそうとしない。 「なぁ怖いか?俺が………」 優しく優しく問いかける 「………………酷いよ。新くんは優しい人だと思ってたのに!なんでこんなことするの!?」 「酷い?それはこっちの台詞だ。俺がこんなにも愛してるのに他の男のとこにいくんだからさ……」 「!!?」 「なぁ志穂、俺はやっぱりおかしいのかもしれないな………。子供の頃から気に入ったものは誰の目にも入らないとこへ隠したくなるんだ」 「!!」 本能が鼓膜を通じて警戒音を鳴らしだす……… 危険危険危険危険危険危険 逃げようと必死に駆け出したが――――― 「きゃあぁ……―――――ッッ!!」 彼女が叫び声を出す前に片腕で口を封じ、全身の力で押し倒す。 「はは、ハ、はッ、ハハハ、ははは!!!」 狂った感覚、高笑い。 身体の奥から全身にかけて、支配感が満たしていく………。 彼女は瞳から涙があふれ、ポタポタと不規則に雫が床へと落ちてゆく… ―狂喜― 全ての五感を狂喜が満たし、今さっきとは別人のようなその表情は狂った証。 男の本性が姿を表す 「それじゃあ、志穂… どうやって死にたい?」 午後8:00 上の階からまた夫婦の怒鳴り声や泣き声が聞こえてくる 窓の外からはバイクの走る騒音や人間のざわめきが聞こえてくる いつも通りいつも通り あしたもちゃんとゴミを出そう 「明日は朝からバイト入ってるからさ、いい子にして待ってろよ」 柔らかい髪を撫でる 向こうからは返事は無い 「おやすみ、―――――志穂」 ニコリと笑い襖を締める。 誰にも見られない 誰にも触らせない 誰にも届かない 俺だけの――――――。 狂った狂ったひとつのお話 前へ |次へ |
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