《MUMEI》

 







黒いコートのポケットからまたも黒の携帯を取り出す。





「………………あ、もしもしぃ―シノさーん?捕まえましたよ―、はい、馬鹿ですコイツ馬鹿です―。じゃあ連れてくんでお金用意しといてくださいね♪それじゃ後程」





ピッ、と通話ボタンを切り、倒れた男の首根っこを持ち自分よりはるかに重量があるだろうその男を細い片腕だけで引きずって





鼻歌を歌う青年は機嫌よさげに裏通りを去っていく……………。











「なんなんだアレ!?」



周囲にいた一人の不良が思っていたことを声に出す






「知らねーのか?ありゃ死神だよ」

「死神?」





隣にいたもう一人の不良が口をはさんできた







「この街に根をはっている男だ。とにかく暴れまわることが好きで世の中を引っ掻き回すことを趣味とした奇っ怪な野郎だ。だが腕は一流、頭もキレる、運も強いときた。奴に金を渡せば犯罪者もすぐ取っ捕まる。警察は奴の行動に目を閉じている……………『特別』なんだ」








―『特別』―





そんな待遇を持つ人間がこの世にはいるのか―――――。









「じゃあなんで死神なんて呼ばれてんだよ」

「目の前で見たろ?奴の情けひとつかけない暴力に、狂った笑い声。やられた人間は皆こう言うんだ…………




『魂まで持っていかないと気がすまない死神みたいな男』…だってな。」




「……………………」

「しかも全身黒だし、正体不明な人物。奴に死神って名はピッタリだろ?」




とんでもない人間が住み憑いている。








「名前はなんだっけかなァ〜……………確か、黒尾(クロビ)…刈真(カルマ)?そんで仕事も自営してたなぁ、えーとなんだっけ」













▽▲




プルルルルルル







「はーい、こちら黒尾相談事務所。何かお困りで?」







ニコニコ昼と変わらない笑顔で対応する。


黒い電話機に黒い長机。窓からは夜にも関わらず騒がしい光が射し込んでくる









「え? 妻に、浮気がバレちゃいそう…………いっそのことバレちゃえば? あ、ダメ?そうですかそうですか―、それじゃあ明日の午後13時30分にいつも通り会社に行くような格好してココに来て下さ―い。あ、鞄も忘れずに」







お待ちしておりまーす。と言って受話器を下ろす







 

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