《MUMEI》
morning
うあー…うるさいなあ。誰よ、朝からチャイム連打してくるやつは。


日曜日の良い天気の朝。仕事も休みで1日中寝てるハズだった予定を狂わされた。ノソノソと布団から出て、乱れた髪を手くしで直しながら、寝起きがバレないような声でドアフォンを出た。


「はい……誰ですか?」

『え…っと、今日からこちらでお世話になる神埼ですけど』

「……は?」


まだ眠くて目が開いてなかったけど、訪問者の一言で一気に目が覚めた。しかもよく声を聞いてみたり白黒で写る画面を見たりして、どう考えても……男だ……。"お世話になる"って何?!何回瞬きしたり、何回目擦っても景色は変わらず、見たことのない男。いや、本当に誰よ。


『あのー…、聞こえてますか?』

「え、あ…!人違い、じゃないんですか?」

『こちら…川島さくらさんの家ですよね?』


何か見ながら話す知らない男。声には出さなかったけど、内心ドッキドキ。遠慮気味に言う、見ず知らずの男が私の名前を呼んでいる…っ!!1人でテンパってたとき、大きな音で着信音が鳴り響き、変な声が出てしまった。


『大丈夫ですか?!……さくらさんっ!』

「い、いえ…携帯が……は?」

『はい?何か…?』


馴れ馴れしく名前で呼ぶなあっ!と怒ろうとしたとき、画面の向こう側では、催促するような怒った声と、近所のママさんたちの1オクターブ高い声。私の部屋も催促するような着信音。


私は静かに受話器を元に戻し、充電が終わった携帯電話を見ると母親から6件の着信履歴。1回切れた音は7回目の着信音が鳴り始めた。


「は……『遅い遅い遅い!!何時間お母さんを待たせれば気が済むのよっ!!』


キーン!!と耳が痛くなるぐらい発狂するから、母親の気が済むまで耳から携帯電話を遠ざけた。


『ちょっと聞いてるの?!』


そんな逆ギレみたいな台詞が聞こえてきてやっと耳元へ戻した。


「はい、聞いてます。用件は何でしょう?」

『そーよ!今日さ、あんたの家に男が来るから、家見付かるまで住まわせなさい』

「はァ?!ちょ…っ、何勝手なこと言ってるのよ!?」

『いいじゃない、たまには親孝行しなさい。お母さん、お金だけじゃ騙されませんよ。たまには男の1人や2人、5人10人連れてこい』

「だから、って……私の家に他人、ましてや男なんて……!」

『そんなこと言っても変えられません。慧くんで男慣れしなさい』


私が黙り込んでいると、お母さんがワザとらしい咳をした。


『詳しくは慧くん本人から聞いてね。ものすっっっっごい、良い子だから。年齢の割には大人しいし、しっかりしてるし。まあお母さん的にはもう少しヤンチャな方が良いと思ったんだけどね』


自分が話したいだけ話して満足すれば電話は切れた。相変わらずだー…と思ったけど懐かしい感じがした。

っていうか、言うの遅すぎじゃない…?



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