《MUMEI》

―あいつら、何やってんだ?




図書室を後にした山男は、生徒会室に行く前に、物音のしたのが2年の教室付近からだったのが気になり、教室に残っていたはずの善彦と田中の様子を覗きに行こうと階段に向かっていた。

山男が教室を離れた時には、他のクラスに残った生徒はいなかったように思う。


山男たちのクラスは図書室のほぼ真上の教室だが、階段は離れていて、その階段を上る際に教室のベランダが見える。




「…ダイ…ちゃん?」




宙に浮いた田中の姿を目にし、一気に血の気の引いた山男は、手にしたプリントを握りしめ、教室に向かって駆け出す。





「なんで、ダイちゃんが浮いてんだよ!善彦!」


階段を上ったものの、教室までの距離はまだ遠い。

この事態を余計な生徒や教師に見られる事が面倒だと思い至り、即座に自分のいる場所から、田中のいる場所までソウランに入れ込もうと、近くの教室に入りベランダに出た。



その時、ベランダからは姿の見えない善彦の叫び声が聞こえた。


「やめろ!たなかぁ!」





宙に浮いた田中の身体が、グラリと揺れ、落下を始めた。

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