《MUMEI》
謎の物体
ユウゴは窓から顔を出して、ホームの様子を窺った。
真っ暗だ。
音もない。
「もう、いいぞ」
ユウゴがそう言うと、ユキナはホッと息を吐いた。
「なんだったの?いったい」
「さあ」
二人は首を傾げながら、駅員室から出た。
なんとも鼻につく臭いが辺りを包んでいる。
そして、何かが焦げたような臭い。
「ねえ、なんの臭い?」
ユキナは顔をしかめながら、鼻を押さえた。
「知らねえ。なんか、燃えてる?」
ユウゴも鼻を押さえ、臭いの元を探した。
しかし、全体的にその悪臭が充満しているため、原因がわからない。
「ユウゴ、これなんだろ?」
ユウゴとは反対側を探っていたユキナが何かを指差して言った。
「なんかあったのか?」
「うん。さっき来たときにはなかったと思うんだけど」
「どれ?」
ユキナの指の先には、真っ黒な物体。
おそらく、悪臭はこの物体から発せられている。
なぜなら、この周りだけその臭いがひどい。
胃の中が飛び出てきそうだ。
「なん、だ?これ」
ユウゴはできるだけ息をしないようにして、その物体を眺めた。
長細い、真っ黒な謎の物体。
「これって、もしかして」
ユキナは気持ち悪そうに眉間に皺を寄せた。
「……ああ、これ、多分さっきの」
この状態からは見る影もないが、その形からわかる。
この物体は、さっきまでここにいたはずの男。
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