《MUMEI》
そうして・・
しばらく、座って休んでいたが、まだ日は高い。
「さてと・・どうしようかな、体力的にはまだ動けるけど・・街の中でもウロウロするか。」
特にテレパスの返信も無いので、街をウロウロすることに決め、宿を出る。
街は結界強化儀式を前に、華やかに飾られている。
2年に一度の結界強化儀式では、最後に、結界の確認の為に起動されるのだが、そのときに燐光が雪のように漂い、消えていく。その光景はとても美しく、他の国々からも見物客が来るほどである。観光客目当ての露店が並び、一種のお祭りとなるのである。
「お祭り・・か。」
なんとなく街を散歩しながら時間を潰す。
「テレパス 狩月〜腕のギブスは、4日後に外すから、適当に守護騎士団の詰め所に来てね〜by彩詩」
(4日・・宿代、ギリギリだなぁ。直ったらお金稼がないと・・治療費とかも払わなきゃいけないのかな・・あ〜・・傷薬とかも使ったから補充しないと・・)
考えれば考えるほど絶望的な財政状況に落ち込む。
「ハンドから貰った指輪でも売ろうか・・ってそんな訳にはいかないよなぁ・・」
気がつけば日も傾き、夕暮れが綺麗な時間。宿に戻ろうと、歩く。
「お!?」
「狩っちゃ〜ん!!」
宿の側で琴と想花が待っていた。
「久しぶり・・なんだよな?」
「さあな、ま、3日間会っては居なかったってだけだな。」
琴が適当に受け答えをする。
「でも災難だったね〜下の階層からモンスターに追われて逃げてくるヒトはたまに居るけど・・「首狩」が出たって聞いたし・・」
左腕のギブスを見ながら想花が心配そうな顔をする。
「たまに居るんだ・・」
ちょっと怖くなった。セレト洞窟は下の階層になれば、かなりの強さのモンスターが生息していて、本来ソコから出て来ることは無いが、ヒトを追って上の階層へと上がってくることがあるらしい。
「「首狩」か・・よく生きてたよな、ボンカーの話じゃロックリザードにも襲われたんだろ?」
「途中でリースとか彩詩さん達に助けてもらってね。俺はほとんど何もしてないよ。逃げ回ってたくらいかな?」
「最後まで洞窟内に残ってたんでしょ。迷子にでもなったのカナ?」
三人で雑談しながら笑う。
「さてと、狩っちゃんの無事も確認したし、私は帰るね〜」
ぺシっとギブスを叩くと街の中心に向かって歩いていく想花。
「んじゃ俺も帰るとするか。またな、狩月。」
「っと!琴待ってくれ。」
帰ろうとする琴を呼びとめ、
「ヴァイオレットマターって知ってるか?」
尋ねる。
「あぁ。かなり高価な水晶だが・・ソレがどうかしたのか?」
振り返ると、不振そうな顔をする琴。
「いや、ロックリザードを倒した時に手に入れたんだけど・・売れるか?」
腕輪のウィンドウを展開し、琴に見せる。
「・・・・・・・いきなり大金持ちかよ!!質とか良く解らないけどな、結晶化してるので10キロちょっと。悪く見積もっても7〜800万って所だ!!適当な武器屋なりなんなりに持って行けば、売れる。」
驚きを通り越して、呆れた顔をした琴。
「マジかよ!!やった!!」
マジマジとウィンドウに表示された結晶を眺める。
「あ〜・・心配してた俺がバカみてぇ・・今度飯でも奢れよ!想花と俺と、ボンカー。後、リースにもな!」
スパン!と頭を軽く殴って走り去っていく琴。
「了解〜お前は白飯ダケダケドナ〜」
「ふざけろ!フルコース喰ってやるからな!!」
笑いながら見送って宿へと入る狩月。
左腕のギブスにも慣れ始めた頃にはすでに3日の時が過ぎていた。
ロナイが言うにはそろそろ外せるとの事だが、念のためと言うことで付けたまま。
ヴァイオレットマターに関しては売らずに手元に置いている。
どこで売ろうかと、質問した所、ハンディングが買い取ると申し出たためである。
この3日間は街を適当に散歩して、過ごした。ボンカーは退院し、リースも一応は退院したのでとりあえず一安心。
セレト洞窟も守護騎士団の閉鎖が解け、普通に出入りができるようになっている。

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