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《MUMEI》 「望みって…」 我ガ名ハ ハラショウ 未だに首の後ろと腕はぎりぎりと締め付けられている中、相手は相変わらず拙い調子で話し出した。 田中が空中に浮いた状態でこちらに助けを求めて見てくるのを感じながら、なんとか相手の意図を聞き出そうと集中する。 スレシル ナラ 我ガノゾミ ヲ 叶エルコト ガ デキル ト 聞イタ 「叶える…とか、そんな事…」 そこまで聞いて、善彦は初めの頃にサプリから聞いたノルフェスがスレシルを狙う理由を思い出す。 ――ノルフェスは、無知が故に迷信を信じる。スレシルは、どんな願いも叶える事の出来る魔法を使う。という迷信をな。 まったく、自分の方がよっぽど魔法が使える事を知らずにその迷信だけを信じて、スレシルを日夜探し回る馬鹿がいるんだよ。―― 「…まじかよ…くっ…なぁ、ハラショウって…言ったか？」 少し身動きを取るだけできつくなる締め付けに苦戦しながら、善彦は言葉をひねり出す。 「俺には…俺たちには…そんな望みを叶える力なんか…無いよ…ある訳ないだろう…たかが、人間だぞ…」 …ソンナ ハズハ 無イ！！ 「…う、うわ！」 「ちょ！」 善彦の言葉を聞いて、ハラショウから激しい動揺が伝わり、善彦も、そして田中すらも、その動揺によって振り回される。 「頼む！田中はスレシルでも無ければ、そんな事一切知らないんだ！解放してくれないか！？」 ノゾミ 叶エルカ 「だから…」 コイツ 用ナイ イラナイ 「！！やめろ！たなかぁ！」 その瞬間、ぐらりと田中の身体が揺れ、わずかに落下を始める。 前へ |次へ |
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