《MUMEI》
おれんじ
5年間会えなかった大好きな人が
この教室にいる。
この教室の教卓に立って話をしている。

「西条航平です。アメリカから来ました。だからといってハーフではありません。
親の仕事の都合で・・・。みんなと仲良くしたいと思っているのでよろしくお願いします。」
大きな拍手と共に航平の緊張もほぐれたようだ。

「西条君の席は・・・そこの橘の横の席な!」
えっ・・・。
私の隣!!!!!!!!
女子から
「いいなーーー☆」という声が聞こえてくる。

航平は覚えてんのかな・・・私のコト・・・。

「佳奈!」
「えっ・・・」
あまりに普通に話かけられたからビックリしたのだ。
「何も変わってねーな。」
そう言って私の頭をクシャクシャする航平。
女子からすごい視線を感じる。

−キーン コ−ン カ−ン コ−ン−
チャイムが鳴った。
真っ先に優衣が私の所に来た。
「西条君と知り合い?」
「うん・・・。」
「うそ!何で?」
「何でって言われても・・・」
「俺ら幼馴染だもんな☆」
航平が突然入ってきた。
「西条君って佳奈の幼馴染だったんだー☆」
色目つかって優衣が話かける。
「佳奈とは5歳からの仲だから・・・。」
「そうなんだー。」
「航平、話にはいってこないでよ!」
「何で?」
「いいから!」

私は優衣の腕をひっぱり教室を出た。
本当は嬉しいはずなのに何でだろう・・・。
航平と話してたら夢みたいで涙が出てきそうで・・・。

「どうしたの?佳奈。」
「航平といたら頭おかしくなるからさ・・・。」
何て嘘ついて本当は泣けてくるからなんだけど。
「(笑) 航平って呼んでんだ!」
「うん。」
「西条君も佳奈って呼んでたし・・・。」
「うん。それが?」
「あんなカッコイイ人に呼び捨てされるなんて・・・。」
「じゃあ優衣って呼んでって言ってきたら?」
「うん☆」

「あの・・・南波優衣って言います。優衣って呼んで下さい。」
−本当に言ってんじゃん・・・−
私は扉から覗きこむようにして聞いてた。
「南波さん?俺さ、何もないのに名前で呼ぶのはちょっと抵抗があってさ・・・。」
「じゃあ何で佳奈は佳奈って呼ぶの?」
「佳奈は別。佳奈はずっと前から一緒にいるし・・・。」
「そっか・・・。」

−キーン コーン カーン コーン−
休み時間終わりのチャイムが鳴った。
私は教室に入った。
「いろいろ係とか決めるから席につけーー」
矢野先生が言った。
「じゃまず寮長だな。」
寮長とは学年の代表みたいなもので
寮の管理を任される。
ま、一言で言うと面倒くさいのだ。

誰一人手が上がらない。
それをみて矢野先生が
「去年に引き続き橘でいこうか。」
「えっ・・・」
「賛成ーーー!」

そんな声がたくさん聞こえる。

「仕事は去年と変わらないけど西条君、分からないコトがあったら寮長の橘に聞けよ!」
「はい。」

そして放課後。

「寮ってどこ?」
早速航平から質問。
「私もこれから行くからさ・・・。」
「おぅ☆」

寮着くまでに学生寮のしくみなどを話した。
「ここが寮だよ。」
「すげーな☆」

航平は一人テンション上がっていた。

私が夕飯の支度を寮でしていた。
すると
「寮長ってご飯も作るの?」
航平だ。
「うん。みんなの分の朝食と夕食はね。」
「大変だね。」
「まぁね・・・。」
「手伝おっか?」
「もう終わったから大丈夫☆」

そして庭に出た。
「航平?」
「ん?」
「どうして急に戻ってきたの?」
「親父の仕事が落ち着いたから。」
「そうなんだ。」
「俺さ、もし佳奈に忘れられてたらどーしよって思ってた。」
「うん。」
「教室入ったら全然変わってない佳奈がいてさ。」
「うん。」
「何か安心した。」
無意識のうちに涙が出てきた。
「佳奈、どうした?」
「もう会えないと思ってたから・・・。」
「うん。」
「今こうして話せてるのが嘘みたいだよ。」
泣いてる私に優しく頭を撫でてくれた。
「俺もう2度といなくならないから。」
「うん。」

まるで付き合ってる彼氏と彼女みたいに・・・。
私は航平のこと幼馴染じゃなく家族のように思っていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫